ベルギー北部の港町・アントワープは、中世から貿易と芸術の中心地として栄えてきた美しい都市です。『フランダースの犬』の舞台や巨匠ルーベンスゆかりの地として日本人にも馴染み深いですが、実際に足を運んでみると、中世の歴史的建造物と斬新な現代建築が入り混じる、活気あふれる姿に驚かされるはずです。
本記事では、限られた滞在時間の中でアントワープの魅力を骨の髄まで味わえる「厳選観光名所5箇所」をご紹介します。教科書通りの歴史だけでなく、地元の人たちのリアルな過ごし方や、旅行に役立つディープな情報も交えて解説していきます!
聖母大聖堂
📍 住所:Groenplaats 21, 2000 Antwerpen, ベルギー
アントワープのシンボルである「聖母大聖堂」は、1352年から約170年もの歳月をかけて建造されたベルギー国内最大級のゴシック様式の教会です。足を踏み入れた瞬間、高い天井と美しいステンドグラスから差し込む光に圧倒されます。ここは日本人にとって、アニメ『フランダースの犬』のラストシーンでネロとパトラッシュが天に召された場所としてあまりにも有名です。
最大の見どころは、ネロが憧れ続けたバロックの巨匠・ルーベンスの祭壇画です。『キリストの昇架』『キリストの降架』『聖母被昇天』という傑作がすぐ目の前で鑑賞できます。館内は美術館のように静かで荘厳な空気が流れており、芸術のパワーと歴史の重みに思わず涙する人も少なくありません。ミサが行われている時間帯は入場が制限される場合があるため、訪問前に開館時間をチェックしておくことをおすすめします。写真撮影はフラッシュなしであれば可能です。
ネロとパトラッシュの像
📍 住所:Handschoenmarkt 3/Het 17de-18de Eeuwse Salon, 2000 Antwerpen, ベルギー
聖母大聖堂の目の前にある広場には、ネロとパトラッシュの像が設置されています。石畳のアスファルトを掛け布団のようにして、二人が寄り添って眠る姿は、物語の切なさをそのまま形にしたようなデザインです。大聖堂で名画を見学した直後に立ち寄れば、胸が熱くなること間違いなしの必見スポットです。
ただし、ここで少し現地の「リアル」をお伝えします。『フランダースの犬』はイギリスの作家が書いた物語であり、日本で爆発的にヒットした一方、地元ベルギーでの認知度は意外と高くありません。そのため、静かに想いを馳せる日本人観光客の隣で、地元の子供たちが無邪気に像の上によじ登って遊んでいる……というギャップのある光景によく出くわします。神聖視しすぎず、地元の人々の日常風景に溶け込んだアートとしておおらかに楽しむのが現地流です。
ブラボーの噴水
📍 住所:Grote Markt, 2000 Antwerpen, ベルギー
美しい市庁舎が建つ「グローテ・マルクト(マルクト広場)」の中央にあるのが、街のアイコンである「ブラボーの噴水」です。ここには、アントワープの地名の由来ともなったディープな伝説が隠されています。かつてスヘルデ川で船乗りから通行料を巻き上げ、払えない者の手を切り落としていた巨人アンティゴーン。その悪行を成敗したローマの戦士シルヴィウス・ブラボーが、巨人の手を切り落として川に投げ捨てようとする躍動感あふれる瞬間が彫刻になっています。
オランダ語で「手(ant)」を「投げる(werpen)」がなまって「アントウェルペン(アントワープ)」になったという説があるほど、この伝説は街のアイデンティティです。この逸話を知ってから街を歩くと、パン屋や土産物店でよく見かける「手の形」をしたお菓子(アントワープセ・ハンチェ)の意味が腑に落ちるはず。風が強い日は噴水の水飛沫が飛んでくるので注意しつつ、伝説の余韻とともにお土産選びを楽しんでみてください。
プランタン=モレトゥスの家屋・工房・博物館複合体
📍 住所:Vrijdagmarkt 22, 2000 Antwerpen, ベルギー
一見地味に聞こえるかもしれませんが、ここは「印刷に関する施設」として世界で初めて世界遺産に登録された、非常に珍しく価値のある博物館です。16世紀から続く印刷工房の跡地であり、世界最古の活版印刷機が今も当時の姿で残されています。中世ヨーロッパにおいて、アントワープがパリやベネチアと並ぶ世界の印刷・出版の最先端都市だった歴史を肌で感じることができます。
単なる機械の展示だけでなく、印刷によって巨万の富を築いた一族の豪華な邸宅としての顔も持ち合わせています。革張りの壁や美しいタペストリー、そしてルーベンスが描いた肖像画など、当時の大富豪の華麗な暮らしぶりを伝える内装は息を呑むほどです。タイミングが合えば実際に活版印刷の実演を見ることもでき、オリジナルの印刷物をもらえることもあります。時間に余裕を持って、静かに中世へタイムスリップしてみてください。
MAS
📍 住所:Hanzestedenplaats 1, 2000 Antwerpen, ベルギー
アントワープ旧港湾地区の再開発によって誕生した、新しいランドマークが「MAS(水路の博物館)」です。赤茶色のコンテナを互い違いに積み上げたような斬新なデザインの建物は、高さ約60メートルにも及びます。館内では、港町として世界中の文化や貿易と関わってきたアントワープの歴史から、各国の民族美術、生と死といった哲学的なテーマまで、幅広い展示が行われています。
旅行者にとって最大の魅力であり裏技とも言えるのが、無料で開放されている屋上テラスです。波打つガラス張りのエスカレーターをぐるぐると螺旋状に上っていく過程も楽しく、最上階からはアントワープの歴史ある街並みとスヘルデ川を360度の大パノラマで見渡せます。特に夕暮れ時から夜にかけての景色はロマンチックで、写真撮影にも絶好のスポット。展示をじっくり見る時間がない方でも、屋上からの景色を味わうために立ち寄る価値は十分にあります。
旅行者が陥りがちな罠!「ルーベンスの家」の現状と代替案
アントワープに来たら必ず行きたいスポットとして多くのガイドブックに載っている「ルーベンスの家」ですが、実は現在大規模なリノベーションを行っており、2030年頃まで邸宅内や絵画の展示を見ることができません。プロジェクションマッピングによる体験型プログラムはありますが、じっくりと絵画を堪能したい方には少し物足りない可能性があります。
そこでおすすめしたいのが、同じくアントワープにある「アントワープ王立美術館(KMSKA)」です。こちらも長年の改修を経て近年リニューアルオープンしており、ルーベンスの巨大な傑作はもちろん、アントワープ学派の絵画から現代アートまで、圧倒的なスケールで展示されています。建物自体も非常にゴージャスで、新旧の芸術が混ざり合う空間の使い方も革新的です。アントワープで深く芸術に触れたいなら、ぜひ王立美術館へ足を運んでみてください。
